キブン

振り向けば奴がいる-酔いどれ譚二十杯目


背中で振り向かずとも身の危険を感じたことはありますか?
正確には振り向くことができなかった。

路地の奥、それは偶然

京都は四条烏丸のすぐそば。口では説明の難しい路地にその店はあった。
向かいが美味しい焼き鳥屋さんで本来は焼き鳥を食べるはずだったのだが、満席だったので向かいのバーに入ることにした。
そこは、一度行ったことがあるものの酔いつぶれてほぼ記憶にはなかったが、その店に置いてある木靴を履いてふざけていた写真だけがスマホに残ってはいた。

適度に暗く。適度に静か。

L字にカウンターがあり、数席ほど壁に向かって座る席があり、周りの状況を確認するには振り向いてあれやこれや見なければい
けなかった。
もちろん注文をするのにも振り向かなければいけない。そうこのときはまだ振り向けたのだ。
いらっしゃ~い。
こう書いてしまえば何ら変哲の無いあいさつ。
しかし、僕と他2名は一瞬で悟った。
「こいつは男が好きだ。間違いない。」
しかし顔は男らしく、筋骨隆々。
だけどなぜかしなびやか。くねっと感上々。
確信が持てないまま彼はやって来た。いや、もはや彼はヤッてきた。
「初動の迷いのない良い動きですね。自身の表れです。」空手の解説さながらに彼のアクションは完ぺきだった。
ただ一つ何かが間違っているとしたら、僕が選ばれてしまったことだ。

夢なら覚めてくれ!

耳に息を吹きかけられました。くすぐったかったです。
他2名、唾をのむ音が聞こえてきそうなぐらい引いています。
なかったことにしました。
あおるようにビールを飲み干しました。
2杯目を頼みました。
シャツのボタンの隙間から手が入ってきました。何の躊躇もなく迷うことなく乳首を撫で彼は去っていきました。
「いいカラダしてるじゃない」という余計な一言を残して。
もう振り向くことはできない。
背中で感じる恐怖。振り向けば奴がいる。
彼は、激しく切っていったのです。丸い刃はなお痛いのだから。
ここをのり超えるかどうかで、人生の楽しみ方が変わってくるのだが若かりし僕には経験値が足りず
少しもぼーっとしながら夜空を見つめて帰った。

Text:福田管

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ピックアップ記事

  1. 地元民が愛してやまない滋賀県彦根の「スイス」の裏メニュー「バーグ丼」
  2. 三田の森の中にあるカフェ「吹上の森」で秋の訪れを感じよう
  3. みやこつづり-一頁目
  4. 本好きの人が集まる「一箱古本市」が京都烏丸五条近くのコワーキングスペース「京創…
  5. いま行きたい信楽:ADCグランプリを受賞した「KIKOF」の制作現場、『丸滋製陶…

関連記事

  1. キブン

    古着のススメっ!-アメリカ~ヨーロッパ ビンテージ編

    僕、ドMなんです …イケない妄想をしたそこのあなた…

  2. キブン

    京都の今日を知る「きょうは何の日」-12月13日は「事始め」

    毎日が記念日運動があったのかはわからないけれど、とにかく毎日なにかの記…

  3. キブン

    カシオレをオーダーする男-酔いどれ譚 十三杯目

    成人式を終えた二十歳の新成人たちは、お酒を飲めるようになる。始…

  4. キブン

    海外からの旅行者の好奇心が強くてハラハラした話

    撮影で、色んな場所に行きます。例えば、深夜二時から始まるお祭り、例えば…

  5. キブン

    年下ヒーローと「ハブァ ナイストリップ」少年-酔いどれ譚

    「ヒーローが年下になったのはいつからだろう。」というキャッチコ…

  6. キブン

    SNSもツイッターも、少しのあいだ忘れていました。一休和尚が過ごした大徳寺「龍源院」で悠久の時を感じ…

    一休和尚(宗純)が過ごした寺としても有名な、京都紫野の臨済宗大徳寺。そ…

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

2人の購読者に加わりましょう

  1. タビ・アソビ

    とりあえず京都の夜景は将軍塚
  2. コト

    2016年12月から2017年1月末までの京都のイベント・観光情報
  3. タベモノ

    中華に恋して!中華あんがのってる「志成園」のカツ丼が美味くて安くて新しい味わい!…
  4. コト

    ジャポニスム2018に現代美術作家ヤノベケンジ×和紙作家堀木エリ子「SHIP…
  5. キブン

    本末転倒酒の虫:酔いどれ譚五杯目
PAGE TOP
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。