キブン

僕の上司-酔いどれ譚九杯目

yoidore03

上司にはいろんな人がいる。

優しい上司、厳しい上司、頼りになる上司、ソリが合わない上司、羽振りの良い上司、ケチな上司。
そりゃ上司も人間だから、いろんな人がいる。当たり前の話だ。
僕は真面目な上司より、ちょっとくらいぶっ飛んでいる上司の方が好きである。
酒は飲めないから、嫁子供が何よりも大事なので、お小遣い制で嫁が厳しいから等といって、サラッとしている上司にはどうもあまり魅力を感じないのである。(ごめんなさい、そういう上司が嫌いなわけではなく、たぶん世間一般でみると、その方が良いし、奥様やご家族には絶対的に良いお父様です。批判してるわけじゃないです。)
ある私の上司Aは酔っ払うと、予想もつかないことをする。その代表的な出来事を紹介したい。それは、僕がまだ社会人3年目、社内のあるクラブの飲み会の時である。
総勢25名程度の男臭い飲み会である。
サッカーの話、一気飲み、エロい話、新人イジリなどひと通り消化した後、一次会がお開きになった。
が、その上司Aがどこにもいないのである。
店の何処を探してもいないのである。
大事件である。
昔から酒癖はあまり良くない上司であったが、行方不明になる事は一度もなかった。
皆の頭の中に、その上司がその昔、酔っ払って10段くらいの階段から飛び降りたことがよぎる。
…ま、さ、か!
大急ぎで会計を済まし、みんなで居酒屋の周りを探す。
すると、居酒屋となりのコインパーキングの車が駐車したら上がる装置を枕に、寝ている上司を発見。この人、こんな泥酔でも枕を求めるんだなと誰かが言うと、皆笑いが止まらなくなった。
笑いがなんとかおさまった後、誰かが大声を出した!
「お、おデコから血が出ている!」
第一発見者が僕らじゃなかったら確実に暴行事件で110番からの119番である。
「コインパーキングで40代の男性がスーツのまま倒れて流血している。」
暗くてはじめはわからなかったが、それは、それは、見事な血の出方である。
おデコ右上に、漫画みたいにタンコブが出来て、そこから綺麗に出血し、タラッと血が流れている。
縫合するまでの傷ではなさそうなので、上司と家の方向が一緒の人間が付き添い、帰る事になった。
ちょっとまて、方向が一緒なのは僕ではないか。何が楽しくてデコから血を流してべろんべろんのおっさんと2人で帰らなくちゃいけないのだ。しかし見捨てるわけにはいけない。自分の不幸を受け入れたあと、上司と2人で帰る事にした。
上司は僕に言った。
「腹へったわ。」
ん!?と思ったら上司は急に右にそれて小走りになった。
どこへ行くのだ!?
と思ったら、なんとマクドナルドのドライブスルーに徒歩で突入し、注文している。
たぶん、この人の中では、いま自分は車なんだろう…
店員さんに、謝った後、また2人で駅へ向かった。終電がもうすぐである。
と、思った矢先、上司は次にほか弁に入り、海苔弁を2つ買いだした。
店の前の誰もいないバス停のベンチで、僕らふたりは、少なくとも僕は、食べたくもない海苔弁をほおばった。
月の綺麗な夜だった。
「月きれいっすね」
僕は言った。
「海苔弁が一番うまいな」
上司は言った。

次の日上司はデコに絆創膏を貼って出勤してきた。そして、丁寧に部員ひとりひとりに迷惑かけたことを謝罪している。皆、朝から笑いがとまらない。
上司はそのまた上司に「どうしたんや、デコ?」と聞かれた。
上司は言った。「気付いたら、バス停のベンチで⚪️⚪️君と、月見ながらほか弁食べてました。」
それ以上、誰も話を聞こうともしなかった。

以上、少し迷惑だし、こんな上司にはならないでおこうと思うが、なぜか魅力を感じてしまう上司なのである。
そして、月の綺麗な夜は海苔弁をなぜか食べたくなるのである。

“Column:しょる”

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