鏡のように空を写すボリビアの絶景「ウユニ塩湖」。地球の反対まではなかなか行けないけれど、市内にあったら行ってみたいのでは。春は桜、秋には紅葉の名所として人気の高い「広沢池」は、本家ほどの広がりはないけれど、池全体の水位が低く波も少ないため、池面に空が映る「コンパクトなウユニ塩湖風」景色が楽しめる。
狙い目は雲の多い晴れの日
11月、朝8時頃の広沢池。嵐山の渡月橋から近いこともあり、昼間は北嵯峨散策を楽しむ人が多く訪れる、観光の名所のひとつ。周囲およそ1.3キロメートルの小さな池は、大分県の「初沢の池」、奈良県の「猿沢の池」とともに日本三沢のひとつに数えられているそう。農林水産省が定めたため池百選にも選ばれており、古来から灌漑用にも使用されていたとか。
春は桜、夏の五山の送り火には幻想的な灯籠流しが、秋には紅葉、冬には雪化粧の山々が池面を彩り、撮影や絵を描きにくる人が後を絶たないのだとか。この日も紅葉の見頃を迎えていたので、訪れた時には、すでに撮影をしているカメラマンが3、4人ほど。中には夜明けからずっと撮影している人も。
雲は多いけれど程よく晴れ間が覗く天候だったので、池には空の表情がくっきり。ウユニ塩湖ほど幻想的ではないけれど、池面を境にくっきりと線対称になった不思議な光景に、足を止めじっくり眺める散策者も。スマホのカメラでも綺麗に映るはずなので、手軽にウユニ体験をしたい人は、ぜひ広沢池に行ってみて。
※写真は全て池に突き出した観音島から撮影。
広沢池ってこんなところ
実はどのようにできたかがはっきりしていないそうで、その成り立ちは諸説あり。一番有力だとされているのが、平安時代の中期(永祚元年、989年)に宇多天皇の孫・寛朝(かんちょう)僧正が池の北西に遍照寺を建立した際に造られた池と伝えられ、「遍照寺池」の別名も。
他には、嵯峨野を含めた洛西の地は、8世紀頃に秦(はた)氏によって開拓・開発された地であるため、その秦氏がこの付近一帯の用水池として原始的な溜池を造ったのが始まりとの説も。
ただ、そんなことがどうでもよくなるくらい美しい景色が楽しめるので、西行法師や松尾芭蕉など歴史的な著名人もこの池のことを歌に詠んでいるんだそう。
また一年を通して水位がほぼ一定に保たれており、鯉の養殖も盛ん。12月には水位を下げ、鯉の収穫祭も行われており、季節の行事として人気が高い。12月に入ると山も枯れ木がちらほら目立ち始めるので、撮影するなら今がチャンス。雲のある晴れた日を逃さないで。

広沢池の観音島
広沢池
手軽に絶景に出会える度 ★★★★★
住所:京都市右京区嵯峨広沢町
駐車場:なし
“Text:Taico,Photo:中川 直幸”