2016年10月22日は、京都に人が集まる日。昼は京都の三大祭「時代祭」が、夜は京都の三大奇祭「鞍馬の火祭」が開催され、国内外問わずカメラ片手に祭りを楽しむ人の姿が見られました。でも、時代祭は三大祭なのに、なぜ鞍馬の火祭は三大「奇祭」なのか、そこにはいかないとわからないちょっとユニークな理由があるんです。
平安時代から続く、情勢不安を鎮める儀式
鞍馬にある由岐神社の例祭として、毎年行われているこの祭りの起源は平安時代。戦乱や天候不順や大地震により、農作物が取れなかったり、家畜が殺されたり、町の情勢が不安定だったそうです。このあたりは少し今年と似ているところがあります。
そんな情勢不安を鎮めるために、朱雀天皇により平安京の内裏に祀られていた「由岐明神」を、鞍馬に遷すことになったそうです。
その際に、鴨川に生えていた葦をかがり火として道に灯し、松明を持った行列が1kmも続いたそう。鞍馬に住む人がこれに感動し、素晴らしい行事を後世に残すべく、毎年開催しているのだとか。
パワースポットであり、天狗伝説も伝わる不思議な場所鞍馬
夜の山奥で行われることだけでも不思議な雰囲気があるのですが、鞍馬という土地柄自体が、京都でも特殊なんです。日本の霊山に伝わる「天狗伝説」の総元締めがいるといわれているほか、源義経が天狗から剣術を教わったという言い伝えも、残っています。
ちなみに天狗の総帥は、鞍馬寺の奥にある「院魔王殿」という、RPGのラスボス感が半端ない社に、大地の霊王「護法摩王尊」として祀られています。もちろんラスボスではなく、人類を救うために「金星」からやってきた正義の味方だそう。
知らない人も多い「サイレヤ、サイリョウ」の掛け声と「ちょっぺんの儀」
奇祭と呼ばれる所以は諸説あります。ひとつは夜に行われるということ。真っ暗な闇夜を延々と垂らす松明は、昔の人々からすると、奇妙な光景だったに違いありません。また奇祭として伝わることとなった大きな理由がおそらく、祭りの掛け声と、「ちょっぺんの儀」かと思われます。
午後6時になると「神事にまいらっしゃーれ」の掛け声とともにスタートする「鞍馬の火祭」。小さな松明から順に点火され、子どもも大人も町を練り歩きます。その際に、「サイレヤ、サイリョウ」と掛け声を出すのですが、周りの人から「あれ、なんて言ってるの」と疑問の声が聞こえることも。これは「祭礼や、祭礼」と言っているんだとか。そんな現地の人しかわからないような掛け声は、他の町から訪れた人には、なにかの呪文のように聞こえ奇妙に思ったのかもしれません。
そして「ちょっぺんの儀」。夜9時になると祭りはクライマックスを迎えます。大きな松明を持つ男たちが山門の石段に一斉に集まります。この風景は圧巻で、これを見ずして「鞍馬の火祭」を体験したとは言えないはず。
その後、八所大明神・由岐大明神の神輿が、女性に引かれて参道をくだっていくのですが、その神輿の担ぎ棒の上で、20代前後の青年が、Vの字の大股開きを披露します。これが知らない人から見ると、奇妙であったに違いありません。
もちろん大人になるための通過儀礼で、Vの字の大股開きを披露する青年も恥ずかしい、なんて気持ちは一切ないことでしょう。
鞍馬の火祭へのアクセス
もちろん、毎年多くの人が訪れます。旅行会社のツアーに組み込まれていたりもします。唯一の公共交通機関叡山電鉄は、テレビで見る東京の通勤ラッシュそのものです。だいたいピークは18時くらいにはそんな状態になりそれが、祭りのクライマックスの午後9時くらいまで続きます。それを避ける場合には、午後16時までに叡山電鉄「出町柳駅」を出発するのがおすすめ。
また、車の駐車場は見当たりませんでしたので、バイクか自転車でアクセスすると無料の駐輪場が用意されているので、おすすめです。車の駐車場は、出町柳か叡山電鉄鞍馬線の各駅近くの有料駐車場に停めてそこから電車、という流れになるので、だったら出町柳駅に停めて、最初から席を確保するのが良いでしょう。午後9時過ぎから帰りのラッシュが始まります。最終、午前0時過ぎまで電車はありますが、かなり混雑するので、早めに電車に乗るのがおすすめ。中には帰りの電車に乗るまで2時間かかったなんてこともあるそうです。また、山ですので、市街地よりも若干冷えます。外国人の方はTシャツの方もおられましたが、初冬並みの防寒対策がおすすめです。
鞍馬の火祭
住所:京都府京都市左京区鞍馬本町1073
時間:18:00-24:00
“Text:Taico,Photo:中川 直幸”