今宵は、辛さに狂って行くところまで行ってしまった人たちの話をひとつ。滋賀県守山にある『BLUE DINER(ブルーダイナー)』で、ギネスで世界1辛いという認定を受けている唐辛子「キャロライナリーパー」を食べられるイベントがあると聞き、参加してみた。「激辛ナイト」と呼ばれるこのイベントは、すでに2回開催されており、今回が3回目。以前参加した人の話を聞くと「辛いんだよ。いや、辛いんじゃない、痛いんだ。でも美味いんだ。止められないんだよ、この刺激が。あの味をしってしまったら虜になっちまう。3回目が開催されるって?へへ、聞いただけでワクワクしてしまう。なぁ、俺いまどんな顔してる?」とおよそ、シラフではない返答が…もちろん冗談です。がしかし、激辛ファンからの開催を熱望する声が止まず、次第にその声は、企画者であるシェフの間塚さんと山北さんのプレッシャーへと変貌。そして遂に、目に入ったら失明する恐れがあるという毒物、違う、唐辛子「キャロライナリーパー」へ行き着いたそう。さてさて、どんな料理がお目見えするのか、写真でどこまで伝わるのかわからないけれど、その夜会で登場した料理の辛さを少しでも伝えたい。
世界1辛い唐辛子としてギネス認定された「キャロライナリーパー」って、どれくらい辛いのか
初めて知ったのだけれど、辛さを表す「スコビル」という単位があるそう。辛いとされるハバネロで約50万スコビル、ブートジョロキアで約100万スコビルだとか。さて今回の「キャロライナリーパー」はというと、およそ300万スコビル。辛いなんてもんじゃない。実が目に入ると失明するおそれがあるとか。
シェフは、まるで芸能人の休日のように、グラサンとマスクを着用して調理しているし、店に足を踏み入れると、空気が辛い。空気が辛いなんて形容することは、まずない。だけれど、実際に空気が辛い、もうこれは経験してもらわないとわからない。
ちなみに今回は「激辛ナイトvol.3-Vive la vida loca」と題されており、副題のスペイン語は「狂気を楽しむ」みたい意味があるとか。

狂気を楽しむ参加者たち
辛いのが苦手な人も食べられるがテーマ
激辛なのだけれど、実際に1回目から参加している人の中には、辛いのが苦手という人も。話を聞いてみると、コース形式で供される料理は、前菜からメインへと徐々に辛さを増すので、 舌が辛さに慣れていき最後の激辛メニューも食べられるようになるのだとか。主催者も「美味くて、辛い」をテーマに、美味しいという感覚を残しつつ、悶絶する辛さを追求しているそう。
そんな激辛コースの1品目を飾るのは、参加者がオアシスとよぶ「冷奴」。
どこが辛さのポイントなのかというと、かけられている醤油。能登川で仕入れた醤油に「キャロライナリーパー」の輪切りを数日漬け込んで辛みエキスを十分に抽出したそう。オアシスと呼ばれるのは、辛さがほとんどなく、他の激辛料理で口の中に痛みを感じた時に食べると、舌の痛みが少し治るから。
ナチョスはソースに「キャロライナリーパー」を使用。こちらも同じく、痛みの緩和材のような存在となる。
次に登場したのが、サラダ。写真を撮り忘れたのだけれど、見た目は普通の水菜のサラダ。ただ、ドレッシングが激辛で、ここで一気に辛さのレベルが上昇する。オイルベースのドレッシングは、辛みを口の中に広げるような役目を果たし、舌だけではなく、口の中がヒリヒリする。全てのコースを食べ終わった強者達が、このサラダが一番辛かったかもしれない、とつぶやくほど辛い。この時点で、サウナに行ってきたの?と聞きたくなるような汗が顔に吹き出す人が続出。参加者の1人は我慢できず、タオルをコンビニに買いに行く。
ちなみにコースの内容はこんな感じ。

今回のコース料理のリスト。処刑フライドライスがトリを飾る。
中華をベースにしたコース料理
次に登場した麻婆茄子は、油とひき肉でだいぶ辛さが緩和されているらしく、とにかく美味い。見た目はこれが一番辛そうなのだけれど、食べている最中はピリッとくるくらい。ただ、食べ終わると、後から辛さが舌にくる。「美味い、美味い」と頬張っていた参加者も、食べ終わった後は顔が汗だくになっていた。
この後に出てくる唐揚げの前に、気の触れた主催者山北さんから「じゃあ、齧りましょうか。実を」という提案が。止めてくれ、と言う前に、参加者から勝鬨のような歓声があがり流れで食すことに。
本当にひと口。ピーマンの種くらいの大きさをカリッと食べてわかったことは、そのまま食べてはいけないということ。まず、味はわからない。なぜか鼻が詰まる。窓が開け放たれた店内は寒いはずなのに汗をかく。唇が赤くなる。参加者が一斉に飲み物の「オアシス」を頼む。「オアシス」はマンゴーラッシーのような飲み物で、辛さを和らげるという謳い文句がメニューに書かれているけれど、一向に辛さが引かない。というか、口の中いっぱいに辛さが広がり、全員が悶絶する。氷が唯一の救いで、舐めている間だけ、痛さが和らぐ。クールな参加者も目を見開き、僕も立ち上がり意味なく店内をウロウロ。その一部始終をご覧頂きたい。

齧った直後。なんともないっすよ、みたいな表情を浮かべる参加者。

異変が起こった瞬間。

笑っているのか、苦しんでいるのか、驚いているのか、とにかく辛さがマックスの状態。

その後、口の中からサヨナラバイバイ。
ラスボス処刑フライドライス登場
その後、各自15分ほどの悶絶タイムを経て、回鍋肉と唐揚げを食す。どちらも、麻痺しているのか辛さをまったく感じない。回鍋肉は味噌が効いていて、辛さもマイルド。唐揚げは、衣やタレに「キャロライナリーパー」が練り込まれているそうだけれど、ちょっと香りがするくらい。シェフ曰く「揚げたことによって辛さが飛んだ」そうだ。
そして最後にサーブされたのが、今回の目玉「処刑フライドライス」。
じゃんけんをして初めに食べる人を決定。「うん、美味い。全然辛くないわ。美味いだけ。ん、違う。辛い。美味い。辛い、痛い、美味い。わかった、刻まれているヤツがヤバい」とアドバイスを頂く。慎重に食べる箇所を選ぶも、例の刻まれているヤツはどうしてもスプーンの上に乗ってくる。で、ひと口。
これ、ふた口目に手が伸びなくなるほど辛い。キャロライナリーパーの他に、ジョロキアと、鷹の爪、唐辛子の4種類が使用されたこのフライドライスは、汗をかきながら食べ続ける人と、ひと口で諦める人に二分された。ただ、汗をかきながら食べ続ける人に話を聞くと「間をあけたら終わり。食べ続けないと死ぬほど辛い」とのこと。ほぼ違法薬物中毒者と同じようなことを口走っている。
その後、全員でアイスをオーダーし、口の中を正常な状態に戻していくと、なぜかどっと疲れが出てきて、ほとんどの人がウトウト。このあたりで雨が止んできたので、僕はひと足先に会を抜けることに。
ギネスで世界一辛い認定を受けた「キャロライナリーパー」は、美味しさを追求すると、辛さが苦手な人でも食べられるよう。ただ、空きっ腹では食べない方が良いかも。経験者は、何かしらで胃に膜を張ってから食べるのだけれど、空きっ腹で食べた人は、お腹の不調を訴えていた。あと、翌日はさらに違うところが痛むので、辛い物を食べられる際はご覚悟を。
激辛ナイトの4回目は年末を予定。開催者からは、「激辛ナイト一周年なので、派手にいく」とのこと。情報を得たい方は「無国籍食堂 ブルーダイナー」をフォローして。今回紹介したメニューはイベントだけの特別メニューで、通常時にはないのでご注意を。
無国籍食堂 BLUE DINER
住所:滋賀県守山市勝部6-4-37 BLUE bldg 1F
営業時間:17:00-翌3:00
Close:火曜日
電話:090-6554-2409
※土日祝日は併設のライブ会場でイベントが入ることが多いので、営業日程を確認して
「激辛ナイト」不定期開催。企画:間塚知輝、山北洋平
“Text,Photo:中川 直幸”